ませんけれど……もう今度来た時には……今度来た時には……もう私はこの世に生きてはおり……ません……」
 これで、青年の話は終った。もう一度繰り返すが、青年が亡くなったのは、それから一週間か十日目ぐらいではなかったかと覚えている。青山斎場で行われた葬式には、柳田家の懇請で私も親族席に立った。黙念として唇を噛《か》んでいる、父親の総裁柳田篤二郎氏の姿も侘《わび》しかったが、嗚咽《おえつ》しながらフラフラと倒れた母夫人の姿には、親の心さもこそ! と私も熱いものの迸《ほとばし》り出るのを禁じ得なかった。

      あとがきの一

 青年の死後十日、約束により、万障放棄して六月九日朝九時、特急つばめで東京駅を発《た》つ。妻の注意によって、途中京都で降りて、名香|幽蘭香《ゆうらんこう》を用意する。下の関山陽ホテルで水の尾村助役牧田耕三郎氏が、門司まで出迎えてくれることを知る。

 六月十二日、小浜《おばま》に着く。目抜き通り呉服町にある小浜警察署を訪《おとな》う。突然の来訪に、受付の警官は胡散《うさん》臭そうに、剣もホロロな顔をしていたが、事情を説明すると渋々古い帳簿なぞを調べてくれる。捜査し
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