に、いくら星は出ていても、この暗《やみ》の中さ、山ん中へ、あれから二里も三里も、弱い女の足で、どうして帰れるでやしょう? 足はともかくとしても、恐ろしくて若い女なぞに、どうしてあの山ん中へ……」
「でもこの辺は慣れてるといってた……」
「冗談じゃございません。いくら慣れてるとこだって、この真っ暗な晩に、人っ子一人通らぬ山ん中へ、三里も四里も……さっきそれを伺った時から、もうからだがゾクゾクして……ああ恐ろしい! こげんに恐ろしいこたアわしも初めてだ……」
亭主の陰に身をちぢめて、内儀《かみ》さんなぞは生きた顔色もありません。
ともかく、あの可哀《かわい》そうなお嬢さんを騙《だま》した薄情な大学生は、どうせ碌《ろく》な死に方はしまいという、村の評判だというのでしたが、
「旦那様がそのお方だとは、夢にも知りましねえで……ただ、村方《むらかた》でそういう噂《うわさ》をしとりますもんで……お気をお悪くなすっちゃ困るでやすが」
と、亭主は気の毒そうな色を泛《うか》べました。
「でも、まあ、よく訪ねておいでになりました。これでお嬢様二人も、お泛ばれになりやすでしょう。それで、お二人で喜んで、
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