全部燃えてしまったでやす……というのです。そして焼けた後しばらくは、近くに馬小屋とかがあって、馬丁のいたその一間《ひとま》に、石橋様というお大尽《だいじん》も、お嬢様たちも住んでいられたようであったというのです。が、やがてその石橋様というお大尽は、ある日、湖の近所で拳銃《ピストル》で頭を打ち抜いて自殺してしまわれたというのです。
 噂では、何でも欧羅巴《ヨーロッパ》の何とかいうムズカシイ名前の国に長いこといられて、その国一番とかいうもの凄《すご》いお金持でいられたが、戦争でその財産が滅茶滅茶《めちゃめちゃ》になってしまったのと、もう一つは、広大な地所を売り、柳沼を売り、大野木の開墾地まで手離して、金を注ぎ込んでいられたマンガン鉱山とかが思わしくなく、それやこれやで、気がおかしくなって、自殺されたらしいという噂だったというのです。
 父親の死後も、娘たちは二人で、その馬小屋の部屋に住んでいたようでしたが、その時分、大野木村の郵便局へよく二人連れで馬を並べて、郵便物を受け取りに来る姿が見られたというのです。そして、東京から郵便が来てるはずだがと、来るたんびに気にかけて問うていたのが、見受け
前へ 次へ
全199ページ中152ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
橘 外男 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング