わんばかりに、私は聞き返しました。途端に、亭主の顔の色といったらないのです。唇まで血の気をなくして、
「だ……だ……旦那様……そ……それは」
 と震えて口がきけないのです。その瞬間、逃げ出すようにドドドドドドと、階段を駈《か》け降りて行く跫音《あしおと》が聞こえます。
「旦那様……た、た……容易《ただ》ごとではございません。そ……それは……」
 真っ青《さお》になって手足ばかり震わせているのです。
「幽霊でございます……石橋様のお嬢様の、幽霊に違いございません」
「…………」
「旦那様、どちらの方でございます? 上のお嬢様でございましょうか? 下のお嬢様でいらっしゃいましょうか?」
「二人で送って来てくれたよ! ……生きてるのに、幽霊なぞと……そんなバカなことが、あるものか!」
「生きてではございません。お二人とももう……」
「何……?」
 途端に私も全身から血の気が引きました。
「四カ月ばかりも前にお亡くなりでございます……」
 夢中で私は起き上がりました。
「……何でも、東京の大学生とかを、えらく怨《うら》んでたという噂《うわさ》でございましたが……ああ、やっぱり噂のとおりだった…
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