でも……?」
「そう……ちょっとあったんだけれど……今度来てみたら、そこがすっかり焼けてしまってね……驚いたよ。おまけに亡くなったんだって聞かされて……」
「ほう! 旦那《だんな》様、よう御存知で……どこでお聞きになりました?」
「なあに、やっと出逢《であ》ってね、その人の娘さんが、そういったよ」
「へえ……お嬢様が……? お嬢様にお逢いになって……?」
「君の家も、その娘さんたちに教えられて……」
 ここまではいいのです。ここまでは何でもありません。が、そのお嬢様と仰《おっ》しゃるのは、おいくつぐらいで? と亭主が聞きますから、上の方は二十二、三……三、四くらいか知ら? 妹の方は二十歳《はたち》……二十一くらい……といった途端に、颯《さ》っと亭主の顔色が変りました。
「ではどうぞ……御ゆっくり……と」
 と宿帳を引ったくり取って、逃げるようにアタフタと階下《した》へ降りていってしまいましたが、それから十分ともたたぬ間に、
「唯今《ただいま》はどうも、失礼をいたしまして……」
 と、またはいって来たのです。小女《こおんな》でも床をとりに来たのかと思いのほか、今の亭主がいいようもない緊張
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