と、また車をもっての迎えであったから、もう具合は直ったのか? 少し早過ぎはしないのかな? と眉《まゆ》を顰《ひそ》めながらも、約に従って第二回の訪問をする。
「若旦那様、お薬の時間でございます」
と、次の間から看護婦が薬の盆を捧げて来た。それを済ませて、仰臥《ぎょうが》しながら、病人はまたこないだの続きを話し出す。話の方によほど気が急《せ》くのであろう? どうも顔色が悪い、土気《つちけ》色をして、もうこれは生きてる人間の顔色ではない。それに息切れが眼立って酷《ひど》い。もうしばらく話をせずに、安静にしていた方がいいのではないか? と気になるが、病人の精神の安らぐ方が第一だから、余計なことはいわずに、またこないだのとおり耳を傾ける。
「こないだは、どこまで申上げましたでしょうか? ……幸い、四月からまた学校へ行くことができるようになりましたというところまで、お話したような気がします……」
もうしばらくの間話をせずに、安静にしていた方がいいのではないか? とどうも気になって仕方ないが、仕方ない、耳を傾けることにする。そこで四日前の話の続き!
「……今度は、どうやら懸念していた梅雨時も無
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