じ読んで、オホホホホホホホと、母は笑い出しました。
「お前の御厄介になっていた石橋さんとかいう外国帰りの技師の方のお家には、可愛《かわい》いお嬢さんがいらっしゃるとみえるね。おいくつ? ……一年生でもないだろうけれど……自分で葉書が出せるんだから、尋常二年生くらいか知らねえ……?」
 と見舞いに来た母は、枕許《まくらもと》の葉書を取り上げて、可愛らしがっていました。尋常二年生どころか! この笑っている母が、実物を見たが最後、いずれも花を欺《あざむ》くような美しい混血児《あいのこ》と知ったら、腰を抜かしてしまうだろうと、私は苦笑せずにはいられませんでした。
 飽き飽きするほど、退屈な病院の生活から解放されて、やっと私が家へ帰ったのは、その年の暮れ頃でしたでしょうか? 大晦日《おおみそか》近くに帰って来て、翌年の三月時分頃まで家でブラブラして、四月の新学期から許されて、やっとどうやら学校へも通えるようになりました。が、学校へ通えるようになった私の第一の喜びは、自分の健康の回復したことでもなければ、また学業が継続できるということでもありません。おそらく親は私の深い心の底は知らなかったでしょう
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