ラビア》文字とも」は底本では「亜刺比亜《アラビア》文字とも」]つかぬ日本にない大変な恰好《かっこう》の片仮名が交《まじ》って、おまけにあちらこちら消しだらけなのですから、いくら懐かしがってみても、どうしてもその意味がわからないのです。向うでも私の手紙を見て、頭をヒネッテいたかも知れませんが、私も二人の手紙を見てわけがわからないところばかり、両方で苦労しながら、とんちんかんな手紙のやり取りばっかりしていました。
 この頃では二人とも苛《じ》れて、六蔵か馬丁《べっとう》の福次郎にでも書かせるのか、時には一層読めぬ、恐ろしくたどたどしいくせに、妙にいかめしい葉書が飛びこんで来てみたり……、逢《あ》えばわかるんだとばかり、到頭私はこの面倒臭い手紙に匙《さじ》を投げてしまいました。姉妹《きょうだい》からは、相変らず手紙の催促が、時々来ます。が、ただ幸いなことには、このたどたどしい字のお陰で、いくら手紙をよこしても、母には、姉妹《きょうだい》の年の判別だけは少しもつきませんでした。
「オテガミクダサラナイノデ……ワタクシタチ……マイニチシンパイシテオリマス……ドウナサツタノ……デスカ……」と判じ判
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