ました。どうもそういう様子が仄見《ほのみ》えるのです。
 そして私も、別段この従妹が嫌いというのではありません。今までは綺麗《きれい》だなと思ってもいましたが、それは、九州へ出かけるまでの話であって、あの二人に逢《あ》った後は、まったく事情が異なってきたのです。
 この従妹なんぞ、あの二人に較《くら》べれば月と鼈《すっぽん》ほどの違いです。私には、上手に女の比較なぞはできませんが、姉のジーナは靨《えくぼ》を刻んでパッと眼が醒《さ》めるように艶麗《えんれい》ですし、スパセニアは大空の星でも眺《なが》めるように、近寄り難い気品を漂わせて、ほんとうの美人というのは、こういうのを指すのだろうかという気がします。二人とも卵を剥《む》いたようなすべすべの皮膚をして、どんな点を較べてみても、こんな従妹なんぞ問題ではないのです。そして変なことをいうようですが、ジーナの前へ出ても、スパセニアと話していても、私は堪え難い情欲に悩まされました。しかも悩まされながらその情欲が、また何ともいおうようなく生き甲斐《がい》というか、充実した人生というようなものを、私の胸一杯に感じさせていたのです。が、こんな従妹とな
前へ 次へ
全199ページ中107ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
橘 外男 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング