は凜々しいので、堪らない。もし二人を持つことが許されないのなら、その一人でもいいから、早く欲しい! 早く、からだをクッつけたい! ……とは思いますけれど、もしどっちかを得たら残る一人にも、さぞ私は、心が惹《ひ》かれるでしょう。ああこの二人とも、持つことができたらなア! と、私は肚《はら》の底から呻《うめ》かずにはいられませんでした。
私が道を降り切らぬうちに、二人とも曲り角で混凝土《コンクリート》の側壁へ這《は》い上がったのでしょう、やがて私にはわからぬ母国話で、嬌声《きょうせい》を挙げながら、縺《もつ》れ合って小径《こみち》を上って来ました。
「ねえ、面白かったでしょう? ……とても、すごいでしょう? ……でも、まだ少し、冷たいわねえ! 夏おいでになった時は、御一緒に貴方《あなた》も、しましょうね。あら、イヤーよ、ジーナ! そんなに水を跳《は》ね返しちゃ!」
私は二人と、口をきく気にもなれません。ただ、からだ中をのたうっている息苦しさ悩ましさに、胸を喘がせ切っていたのです。二人とも、軽そうな水浸しの運動靴で、ピチャピチャと土を濡《ぬ》らして歩いています。悩ましい肢体《したい》を惜
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