ウ、イワオウギ、ミヤマダイコンソウ、等を見た。
十三 槍ヶ岳絶巓
小峰を越して少し登れば大槍、これから上が最も嶮悪の処と聞いていた。が穂高の嶮とは比べものにならぬ、実に容易なもの、三時四十分、漸く海抜三千百二十米突の天上につく、不幸にもこの絶大の展望は、霧裡に奪い去られてしまった、が僅かに、銀蛇の走る如き高瀬の渓谷と、偃松で織りなされた緑の毛氈を敷ける二の俣赤ノ岳とが、見参に入る、大天井や常念が、ちょこちょこ顔を出すも、己《おの》れの低小を恥じてか、すぐ引っこむ、勿論《もちろん》小結以下。
槍からは大体支脈が四つ、南のは今まで通った処、一番高大、その次は西北鷲羽に通ずる峰、次はこの峰を半里余行って東北、高瀬川の湯俣と水俣との間に鋸歯状をなして突き出している連峰、一等低小のが東に出て赤ノ岳に連《つらな》る峰。これらの同胞に登って、種々調査をしたなら趣味あることだろう。
十四 坊主小屋
四時下山し、殺生《せっしょう》小屋を過ぎ、二十分で坊主小屋、屋上には、開山の播隆上人の碑、それを見越して上は、先きに吾々《われわれ》の踏まえていた大槍、今は頭上をうんと押さえつ
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