る、この沢は降雨の際には渓水がニゴシ(米を洗いたる水)のようになるそうである、燧岳図幅に記してある深沢というのがこの沢らしい、シラツキ沢を少しく登ると木ノ葉石があるというので、人夫が取りに行って来た、二時半に此処を出発して只見川の断岸を登って、一時間ばかり行って只見川を徒渉して西岸を辿った、暫《しばら》く進むと右からマツクラという沢が来ている、マツクラ沢の対岸の岩側が※[#「糸+炎」、第3水準1−90−10]々《たんたん》筋のように見えるから鎧《よろい》グラ(岩の転か)と呼ばれてある、鎧グラの上方を登るのであるが、これからは人夫が詳細な案内を知らない、登ってから水がないと困るから、まだ四時ではあるが此処に野営することにした、人夫が十尾ばかりの岩魚を釣って来て、今夜は岩魚の寝入っているのを捕えて来るというて、頻《しき》りに面桶を入れていた網などを利用して、手網のようなものを製作している、自分は岩魚の寝入っているということを生来はじめて聞いたから、可笑《おか》しくなって吹き出したが彼らは真面目も大真面目でいる、夜になると提燈《ちょうちん》を下げて自分にも同行して見ぬかと勧《すす》めたが、岩
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