の紀行にぶん廻す、実際この谷あってはじめて平ヶ岳が雄大で、また意味の深いものらしくなるように想われる。
枝折峠の嶺上を去ると荒沢岳が前面に現われて来る、路は一方下りとなって駒と中ノ岳が右に残雪を光らしている、峠を下り尽くすと銀山平の地となるのである、嶺上から一里五町で北又川に架した橋がある、此処《ここ》を石滝《いしだき》といって銀山平第一の勝地である、元来滝とは奔湍《ほんたん》の意であって瀑布の義がない、ここは奔湍であって瀑布があるのでないから、よく下名したものというべきである、それから平坦地となって所々に人家と耕地がある、石滝から二里ばかりで北又川の一大支流の中又川の出合《であい》となる、中又川の橋を渡ってなお北又川を左に見て行くと、一里弱でこの川が只見川に逢合する、北又川に別れて右折して只見川に沿うて進むこと、三十町弱で浪拝《なみおがみ》の高橋農場に着する、また銀山平の一勝地であって、尾瀬大納言が通行された時に仏陀の奇蹟《きせき》のあった所と伝えられている、標高が約七百米突であって、枝折峠の嶺上から約四時間を要する、高橋農場から二、三町行くと只見川の河傍に温泉が湧出している、銀山
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