んであったらしい、近年にこの平の開墾事業が起って、各所に人家が出来たが、日本でも有数な越後平野で成長した人から見ると、平どころの話しでなく、てんで人の棲《す》む処《ところ》でないらしく考えられるので、移民が尠《すく》ないらしい、甲州の野呂川谷などから見ると非常に美事《みごと》な処である、会津方面の大平野を知らない山間の貧民を優待して開墾させるに限ると思う、自分は平野地で生活が出来なくなったら、この谷へ引込んで、養蚕で米代を取って、蕎麦や粟の岡物で補うて、小出方面で蕨《わらび》や蕗《ふき》がなくなる頃に、蕨や蕗がこの谷では盛んであるから、それを小出の町へ売出したりする気である、まだ棲めばいくらも収入を見出す事が出来ると思う、呉服屋が来るではなし、菓子屋が来るではないから節倹は思うままに出来る、汽車が通って石炭臭い処に蠢々《しゅんしゅん》していないで、こんな処で暢気《のんき》に生活しようとする哲人が農家に尠ないものと見える、村会議員や郡会議員になって、愚にも付かない理屈を並べている者から見ると、どんなに気が利《き》いていて気楽で国益になるか知れない、大気焔はこの位で切り上げて、舞台を平ヶ岳
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