場に着する、自分らが二十幾年前に片貝の小学校に通学していた頃には、一尺ばかりの作場道であって人家などなかったのが、今は三間余の県道が通じて五十軒ばかりの人家が出来た、新来迎寺駅(魚沼鉄道)の軽便鉄道に搭じて九時三十四分に発車すると、十時十八分に小千谷《おぢや》駅に達する、そこから人力車または馬車で約五里を行くと小出《こいで》町である、小出から爪先上りとなって約三里を行くと、日本第一ラジウム温泉の称ある北魚沼郡湯谷村|橡尾又《とちおまた》温泉に着する、自在舘という家がよいようである、小出から人力車を通ずるが二人引きでないと、時々歩行させられてその効が少ない、温泉は温度が低いが往昔から著名なものである、小出から橡尾又に着く少し前に右に折れて行くと大湯温泉がある、橡尾又まで八町ばかりの距離である、大湯温泉は温度もかなりであるが、設備は橡尾又よりも下等である、東栄舘というのがよい、銀山平へ行く人夫や荷物は、悉皆この東栄舘で世話することになっている、だから高橋農場へ通信するにはこの家に宛《あ》てるのである、橡尾又は温泉宿の外には人家がないから、大湯が湯谷村の奥底の部落である、大湯も橡尾又も名勝も
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