った。
 薬罐《やかん》のくらくら煮立っているのが、吉弥のむしゃくしゃしているらしい胸の中をすッかり譬《たと》えているように、僕の妻には見えた。
 大きな台どころに大きな炉――くべた焚木《まき》は燃えていても、風通しのいいので、暑さはおぼえさせなかった。
「けちな野郎だ、なア?」お貞はこう言って、吉弥を慰めた。
「横つらへ投げつけてやったらよかったのに」と、正ちゃんも吉弥の肩を持った。
「きイちゃんの様子ッたら、なかった」と、お君が言ったので、一同はまた吹き出した。
「どうせ、あたいが馬鹿なんですから、ね」吉弥は横を向いた。
「一体どうしたわけなの?」僕の妻は仲裁的に口を出した。
「くれたもんを取り返しに来たの」
「あまりだますから、おこったんだろう?」
「だまされるもんが悪いのよ」
「そう?」妻は自分の夫もだまされているのだと思ってきまりが悪くなったが、すぐ気を変えて、冷かし半分に、「可哀そうに、貰ったと思ったら、おお損《ぞん》をした、わ、ね」
「ほんとに」と、吉弥も笑って、「指輪に拵《こさ》えてやろうと思ってたら、取り返されてしまった」
 こういう話をしているうち、吉弥のお袋が一人
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