耽溺《たんでき》
岩野泡鳴
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)国府津《こうづ》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)大相|上機嫌《じょうきげん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
本作品では字下げ位置の説明で用いている
(例)[#ここから一字下げ]
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一
僕は一夏を国府津《こうづ》の海岸に送ることになった。友人の紹介で、ある寺の一室を借りるつもりであったのだが、たずねて行って見ると、いろいろ取り込みのことがあって、この夏は客の世話が出来ないと言うので、またその住持《じゅうじ》の紹介を得て、素人《しろうと》の家に置いてもらうことになった。少し込み入った脚本を書きたいので、やかましい宿屋などを避けたのである。隣りが料理屋で芸者も一人かかえてあるので、時々客などがあがっている時は、随分そうぞうしかった。しかし僕は三味線《しゃみせん》の浮き浮きした音色《ねいろ》を嫌《きら》いでないから、かえって面白いところだと気に入った。
僕の占領した室は二階で、二階はこの一室よりほかになかった。隣り
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