取り返し談判をした。
「男が一旦《いったん》やろうと言ったもんだ!」
「わけなくやったのではない!」
「さんざん人をおもちゃにしゃアがって――貰った物ア返しゃアしない!」
「何だ、この薄情女め!」
 無理に奪い取ろうとする、取られまいとする。追ッかけられて、二階の段を下り、化粧部屋の口で、とッつかまると、男は女の帯の間へ手をつッ込む。そうさせまいと、悶《もが》いても女の力及ばずと見たのだろう、「じゃア、やるから待ちゃアがれ!」みずから帯の間から古い黄金を取り出し、「ええッ、拾って行きゃアがれ」と、ほうりつけ、「畜生、そんな物ア手にさわるのも穢《けが》れらア!」
 僕の妻はちょうど井筒屋へ行っていたので、この芝居を、炉のそばで、家族と一緒に見たと言う。
「もう、二度とこんな家へ来やせんぞ」と、青木は投げられた物を手に取り、吉弥をにらんで帰って行った。
「泥棒じじい!」
 吉弥は片足を一歩踏み出すと同時に、あごをもよほど憎らしそうに突き出して、くやしがった。その様子が大変おかしかったので、一同は言い合わせたように吹き出した。かの女もそれに釣《つ》り込まれて、笑顔を向け、炉のそばに来て座を取
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