うだ――
「どれ見せろ」と、僕は取って見た。
 下手くそな仮名《かな》文字だが、やッとその意だけは通じている。さきに僕がかの女のお袋に尋ねて、吉弥は小学校を出たかというと、学校へはやらなかったので、わずかに新聞を拾い読みすることが出来るくらいで、役者になってもせりふの覚えが悪かろうと答える。すると吉弥がそばから、
「まさか、絶句はしない、わ」と、答えたのを思い出した。
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「しばらく御ぶさた致し候。まずはおかわりもなく、御つとめなされ候よし、かげながら祝しおり候。さてとや、このほどよりの御はなし、母よりうけたまわり、うれしく存じ候」
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 てッきり、例の区役所先生に送るのだと分った。「うれしく」とは、一緒になることが定まっているのだろう。もっとも、僕はその人が承知して女優になるのを許せば、それでかまわないとも考えていたのだ。
 そのつづき、――
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「ちかきうちに私も帰り申し候につき、くわしきことはお目もじの上申しあげそうろう。かしく。きくより」
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 菊とは吉弥の本名だ。さすが、当て名は書いてない。
「馬鹿野郎!
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