の人々から嫌われる一原因だと聴いていたから、僕はそのつもりであしらっていた。
「どうも馬鹿な子供で困ります」と言うのを、
「なアに、ふたりとも利口なたちだから、おぼえがよくッて末頼《すえたの》もしい」と、僕は讃《ほ》めてやった。
「おッ母《か》さん、実は気が欝《うっ》して来たんで、一杯飲ましてもらいたいんです、どッかいい座敷を一つ開けてもらいましょうか?」
「それはありがとうござります」と、お貞はお君に目くばせしながら、
「風通しのええ二階の三番がよかろ。あすこへ御案内おし」
「なアに、どこでもいいですよ」と、僕は立ってお君さんについて行った。煙草盆《たばこぼん》が来た、改めてお茶が出た。
「何をおあがりなさいます」と、お君のおきまり文句らしいのを聴くと、僕が西洋人なら僕の教えた片言を試みるのだろうと思われて、何だか厭な、小癪《こしゃく》な娘だという考えが浮んだ。僕はいい加減に見つくろって出すように命じ、巻煙草をくわえて寝ころんだ。
 まず海苔《のり》が出て、お君がちょっと酌《しゃく》をして立った跡で、ちびりちびり飲んでいると二、三品は揃《そろ》って、そこへお貞が相手に出て来た。
「お
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