点]。運命は目的もなしに僕等を持て遊んで居る[#「運命は目的もなしに僕等を持て遊んで居る」に白丸傍点]ので――つらいとは思ひながらも、尚、僕等は生きたいのである[#「つらいとは」〜「生きたいのである」に白丸傍点]。日本や希臘の古代の樣に、狹い光明の中に生活して居た時には、物の調和だの、自然の美だのに滿足して居たので、かういふ深い感想はなかつただらうが、僕等にはその當時の人々の樣な太平樂は云つて居られないのである。然し、生きたいのは渠等と同樣であつて、生命を乞ひ願ふのは僕等が心靈の本能であるらしい。それもその筈で、死ぬといふのは別な形に變はるばかりのことであるから[#「それもその筈で」〜「ことであるから」に傍点]、一つの表象が他の表象に移るだけで[#「一つの表象が他の表象に移るだけで」に白丸傍点]、死といふものはないのである[#「死といふものはないのである」に傍点],無闇な物に轉ずる位なら、たとへ蛇に似て居ようが、棒振りに類して居ようが、今の形と精神とを以つて、殘つて居たくなるのは、僕等の執着心から云つて當り前のことだ。慣れない苦勞をするよりも慣れたまゝの苦勞は、そのうちに親みも出て來る
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