る人の事情を知りたいとか、その人を呼び寄せたいとか思ふと、手に持つて居るペンがおのづから動き出して、それだけの働きをする。而も間違へることはないのである。これは、いつか、氏の雜誌で氏が詳しく書いたことがあるし、また※[#「※」は「姉」の本字、336−36]崎博士は大學で之を説明して居られるさうだ。
 ステツドのスピリチユアリズムはどんなに明確な説明が出來るか知らないが、スヰデンボルグの樣な神秘的能力を以つて居た者が、あまり結論を急いだ爲めに、自然の事物を直接に神學的意義を有して居るものゝ樣に斷定してしまつた[#「スヰデンボルグの樣な」〜「斷定してしまつた」に傍点]。『動物界』では、動物體ばかりでない、すべての自然を經て、物質界は心靈界の表象であることを教へ,『天の秘密』と『示されたる天啓』では、心靈の世界、天使の天などで見て來た事を示めしてある。殊に最後の書の如きは、『ユダの支派《わかれ》より出でたる獅子』ばかり解釋が出來るとしてある『默示録』――耶蘇教の神學者が絶望してしまう書――を解釋して、嶄新な意義を附してある。然し、嶄新だといつても、すべてその『天と地獄』の樣に、僕等から見れば
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