て來たので、自分で『居ない』と答へた,すると、客が『その聲はエメルソンではないか』となじつたので、渠はまた『エメルソンは今天の事を考へて居るから、居ない』と云つてしまつた位が落ちだが,然し、スヰデンボルグには、最も不思議なことが實際に起つて居るので、神秘家の本領[#「神秘家の本領」に白三角傍点]を示めして居る。それは、三百哩も隔つたところの宴席に臨んで居て、そこから自分の住居地ストツクホルムの火事を見とめたことだ。その火事が自分の家から三軒目のところで止まつたことまで云つたので、人々が跡から之を問ひ合はして見ると、果してその通りに違ひがなかつた。これは有名な話で、當時の大哲學者カントも、その席に居て、大いに驚いたさうである。
 少し話がそれるが、スピリチユアリズム[#「スピリチユアリズム」に白三角傍点]といふものがある。之を信じて居る人の説に據ると、空間に一種の靈氣があつて、遠方に居る人の樣子などを通信して呉れる。これは、何でも、印度で生れた英國婦人が唱道し初めたのであるが、現今ロンドンで發行する雜誌、『評論の評論』記者ステツド氏は、頻りに之を應用して居るので――誰れでも善い、隔つて居
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