種の靈的光明に接して、かの神夢を見たうらなひ者の樣に、欣喜雀躍、忘我の境に這入つてから、官能的世界を道徳的に説明し初め、科學的著述をやめてしまつた[#「五十四歳の時」〜「科學的著述をやめてしまつた」に傍点]。内的視力[#「内的視力」に白三角傍点]――エメルソンでは、之が洞察になつて居る――を以つて、他界の事物が見える、而も現世の事物よりも明白に見える、と斷言して居る。プラトーンの書に、最古の代には、今の人間よりも高等な人間が居て、神々に近く住んで居たといふ比喩があつて、これは佛教の『原人論』の思想とよく似て居るが,スヰデンボルグは之に追加をして、この原人ともいふべきものは、この世界を表象的に使つて居たので、天に對しては、渠等はこの世の事物は考へない、たゞその意義を考へたのだ[#「この原人ともいふべきものは」〜「たゞその意義を考へたのだ」に傍点]と思つたのである。エメルソンは、この思想を『自然論』に應用して、自然はその理法を洞察的に究めて行くと、透明になつて來て、全く心靈ばかりが殘ると云つたのであらう。
然し、エメルソンの實際生活上には、之をひねくツて、或時、客が『主人は居るか』と訪ね
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