へて、普通人力の限界を超絶するものは、不思議な程にわれ等を奬勵し、また自由にして呉れる[#「何でも想像に訴へて」〜「また自由にして呉れる」に傍点]』と云つた。エメルソンの樣に自由な、規模の大きい頭腦では、政治家になりたかつたらう、軍人にもなりたかつたらう、釋迦や耶蘇の樣な實行家にもなりたかつたらう。然し、渠の性質が許さなかつた。詩人的要素を持つて居ながらも、プラトーンと同樣、それにもなれなかつた――渠には詩作はあつたところでだ。渠は非常な思索家であつた。非常なだけに、眞の意味での詩を作る餘裕が無かつた[#「渠は非常な思索家であつた」〜「餘裕が無かつた」に白丸傍点]のだ。まして、その意氣込みはあつても、實世間に觸れる宗教家や、政治家や、軍人などになれやう筈がない。然し、哲學者としても、系統は立つて居らないのである。たゞ探求的、暗示的精神の非常に活動して居るところは、普通の詩人や俗務家の熱心どころ[#「たゞ探求的」〜「俗務家の熱心どころ」に傍点]ではない。カライルの『過去と現在』が英國で出版されると、エメルソンは直ぐ有益な著書だと云つて、之を米國で飜刻させたのは、天才が天才を知るのが早かつ
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