(五) エメルソンの特色と神秘的傾向

 エメルソンには格言的文句が多い。『たとへ地獄は地獄の下に開らけ、學説は學説を排除しても、畢竟、すべては久遠の原因中に含まれて居る。』『あらゆる事物は表象的であつて、われ等が結果と呼ぶものも發端である。』『下なる理法は上なる理法の姉妹である。』『自然は高貴なものゝ爲めに存じて居る樣だ。』『多くの個人を研究すれば、われ等を原始的境界に導いて、そこには個人が無くなつてしまうか、又はその凡てが頂點に接觸する。』これは皆『代表的人物』から拔萃したのであるが、かういふ考へになつてからは、プラトーンを論じて、希臘人が均齊を愛したことや、定義に巧みなのを欽慕したり,ナポレオンを『惡大神』と罵倒しながらも、その勇氣と覺悟と行き屆いた手段と大常識とを稱揚したりしてある。
 エメルソンの所謂心靈が、百尺竿頭一歩を進めた時の樣に、渠自身も亦發達するに從つて、小乘的見解から廻つて來たが、その『圓論』などではかう云ふことを述べてある,『唯心論には段階がある[#「唯心論には段階がある」に白三角傍点]。われ等が最初に學ぶのは、之を專門學的に持て遊ぶので、磁石が一度玩弄物
前へ 次へ
全161ページ中30ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岩野 泡鳴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング