へを引き出して行つた跡が分れば善いので――メーテルリンクの所謂『暗い運命』は、エメルソンの樣な歸本説では、『明い運命』となりかゝつて居る差はあるが、例の知力で實體なる物が解釋の出來ない限りは、後者の所謂『大心靈』に至つて、前者の所謂『無言』はその絶頂に達するのであるし,兩者が宇宙を全く表象と見て居るのも同じで、たゞ、特に神秘を稱道したメーテルリンクは、エメルソンの樣に知力を以つて之に突入して居ないところが違ふばかりである。讀んで居るうちに、段々論理を離れて、僕等の思想を何となく深い、幽暗なところへ引つ込んで行く傾向のあるのは、僕の非常に嬉しいと思ふ點だが[#「讀んで居るうちに」〜「嬉しいと思ふ點だが」に傍点]、これが兩者の詩的生命になつて居るのである[#「これが兩者の詩的生命になつて居るのである」に白丸傍点]。然し、エメルソンはさすが哲學者肌であるが、メーテルリンクは――その創作に關しては尚更らだが――飽くまで情の上に殘つて、知力をまでも情化する詩人の本色を存じて居る。
今少しエメルソンの特色と神秘的傾向とを云つて、それから、兩者の思想に大感化を與へて居るスヰデンボルグの事に移らう。
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