分/\の小研究にばかり拘泥して居るのを歎息してある。洞察に由つて天地の理法が分つて來ると、時空の關係はおのづから消えて行つて――エメルソンに據れば、理法は乃ち宇宙の大心靈と一致して居るのであるから――自分は段々大きくなつて、宇宙が却つて小い物になつてしまう[#「自分は段々大きくなつて、宇宙が却つて小い物になつてしまう」に傍点],否、宇宙は自分の實行力、意志と同一になる――意志の實現[#「意志の實現」に白丸傍点]である。僕等が思想の圓滿な發表は、乃ち、こゝにあるのだ。かうなると、人は官能的事物を通り拔けて、不滅の教兒に化してしまうのであるが、こゝに一種高尚な疑問が起るに相違ない。――宇宙の最大原因はこれであつて、自然といふ物は、もう、外形的に存在して居ないのであらうか[#「自然といふ物は」〜「居ないのであらうか」に白三角傍点]。
 唯心論を一笑に附してしまうものは、たとへば、唯心論者の頬ぺたを張り飛ばして、その論者が急に怒り出すと、それが痛いか、お前の身體はもう無い筈であるのに、とからかつた例もあるが――そんなものではない、完全な唯心論ならば、何も外界を否定するには及ばないのだ[#「完全
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