そんなえらい人々と競爭するつもりではない、ふとしたことから智識慾が燃えて來たを幸ひ、たゞ僕の立ち塲を知人と讀者とに明かにするばかりである。
或友人があつて、僕の詩に段々神秘的趣味が加はつて表象的になるのを見て、メーテルリンクに氣觸《かぶ》れて來たと云つた。實は、僕には自分に發達させて來た思想があるので[#「實は」〜「思想があるので」に傍点]、そう云はれるまではメーテルリンクを讀んだことはなかつたのである。早速、他から借りて讀んで見ると、なか/\面白い,十數年前から、自分の頭腦に染み込んで居る思想がずん/\引き出されて來た。自分の思想と情念とは、エメルソンの賜物が多いので――一しきりは、英文を作ると、エメルソンの眞似だと、外國教師から笑はれた時もある位である。今日の考へは、その當時から見れば、變遷して居るにせよ、エメルソンから刺撃を受けて進歩して來たのである。エメルソンは僕の恩人である。
ところが、メーテルリンクの論文を讀んで行くと、一篇の構造振りから、思想の振動して居る工合までが、大變このコンコルドの哲人に似て居る[#「ところが」〜「似て居る」に傍点]。僕は十年前の知己に再會した樣
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