ことである。然し、これはたゞ應用範圍の廣狹を外形的に云つただけのことで、悲劇その物の問題に關しては居ない。たとへば、他邦の音樂を耳にして、本統にその妙味を感じ得るものがあらうか、どうか。音樂は世界の共通的藝術だから、人種と邦國との如何を問はないとは、たゞ程度上の口辯に過ぎない[#「音樂は世界の共通的藝術だから」〜「口辯に過ぎない」に傍点]。プラトーンもその『理想國』で云つてある、『音樂の旋法が變動する時は、國家成立の法則も亦之と共に變動することが常だ』と。萬國民各々その風俗習慣を同じくして居ない、從つてその精神に於て差がある、その感情に於て別がある。更らに又これを發表する方法に於て似て居ないところがある。一個人と一個人との間にあつても、既に秘密が存して居るではないか,まして、遠く境界を隔てゝたま/\相接することが出來る國民の間で、互ひに各自の音樂が分り合ふと云ふ人があつたなら、たとへば自國語を忘れて、中途から外國語を話して居る人と同樣で、思想の根底の弱い、人情の輕薄な、あぶなツかしい音樂通であらう。
 音樂の根底になつて居る音律[#「音樂の根底になつて居る音律」に白三角傍点]を見ても分
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