、もう、その門内に蝙蝠の樣に飛びかふ、表象を捕へ得ない。だから、流轉を生命とする僕等に人格を強いるのは、却つて人情に反して居ると云はなければならない[#「流轉を生命とする」〜「云はなければならない」に傍点]。――その刹那と共に、少しもとゞまらないのではないか。醫者の方から云はせても、僕等の身體は時々刻々變遷して居るのである。まして、道學者の所謂人格は、移り易い心に關することだ。近いたとへが、僕等が道をあるいて居る時、初めて知つた道だが、ふと、これは以前に一度通つた樣に思はれることがある。心理學者に云はせると、それは精神の錯亂から來ると説明するだらうが、その精神なるものは既に悲愁と痛苦との爲めに亂れて居るのであるから、僕にはそんな説明は當り前としか取れない。進んで云へば、これは、一つの靈が歩行中の一刹那に捕へた考へを、一刹那後の靈が想ひ出して居るのである[#「これは、一つの靈が」〜「居るのである」に白丸傍点]。僕が或時死んだ兒を火葬塲に持つて行き、そこに一夜を過し、遺骨の包みを提げて家の門まで歸つて來ると、もう、その兒が出て來て自分を迎へさうなものだと思つた。僕の靈はその時一日前の状態に
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