―他を返り見るのは、既にその人の死を意味して居るのではないか[#「他を返り見るのは」〜「居るのではないか」に傍点]。人を思ひ、民を思ひ、國を思ふ間は、よしんば死んで居ないまでも、自我なる意志の半ば眠つて居るからで,一たびその意志が覺醒するなら、その時もう國家と民衆とは喰ひ盡されて居るのである。フレデリツキ大王が國民といふ觀念を外部に立てゝ居たから、自殺をしようとする迷ひも出たので、之を思ひとまつた時は、もう、自分を救ふ奮勵と努力との外は、何にも見とめて居なかつたのである。かう云ふ切實な時にこそ、熱誠はその人の存在を確立し、威嚴はその人の刹那を擴張する[#「かう云ふ切實な時にこそ」〜「刹那を擴張する」に白丸傍点]。自分がこの刹那に感ずる活動がいよ/\誠實なるに從つて、宇宙の威嚴はます/\大なる光輝を放つのである[#「自分がこの刹那に」〜「放つのである」に傍点]。偉大な人物とは、この刹那の光輝を吸收することが平凡な人よりも非常に熱烈なのを云ふのだ[#「偉大な人物とは」〜「云ふのだ」に白三角傍点]。
 熱誠と威嚴との變形を權力[#「權力」に白三角傍点]と云ふのだ。權力は刹那に確立する個人に存
前へ 次へ
全161ページ中115ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岩野 泡鳴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング