に思つて居よう,然し、この大宇宙のうちに、一つとして全く新しいと云はれるものがあらうか、どうか。歴史といふ棺桶[#「歴史といふ棺桶」に傍点]を一度でもこぐらないものがあらうか、どうか。若しあるとすれば、それは、神も知らない、人間も知らない、また棒振りも、アミーバも、最小原子も知らなかつた世界が、別に何物かに依つて作られた時であらう。暗く光る琵琶湖のおもてを渡つて、今撞き出した三井寺の鐘が響くのは、歴史から云ふと、もう、何千世紀も以前の地獄で、一たび魔鬼のこゝろを驚かした聲である。然し、僕等の靈がその聲を聽いて、一刹那の表象に目が覺めた時は、肉即靈の新天地[#「肉即靈の新天地」に白三角傍点]を活現するのである。たとへば、戀の塲合に於て、人目の關はうるさい、友人の嫉妬は面白い、兩親の干渉は面倒だ、手を握り合ふのは嬉しい、子供の出來るのは心配だ,然し、かう云ふことを考へて居る間は、若し靈肉の人格なるものがあるとすれば、その人格が前後左右の空氣に散亂して居るのであつて、まだ一刹那の活世界を現じ得ないのである。男女が相抱擁する時の樣な熱愛は、到底、道學者輩の敬愛や、親愛や、友愛などゝ同一視すべき
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