闇の中に一つの光が現はれた樣なもので、それが僕等の表象であると思へば、消えないうちに、僕等は直ちに之を吸ひ取らうとする。この瞬間は實に偶然に出來るのであつて、對手が貴族のお姫樣であらうが、賤民の子であらうが、そんなことはかまはない。メーテルリンクに據れば、相慕ふのは、何萬年も先きから、その運命で定つて居るわけだが、運命も亦刹那的のものであるから、千萬年は一刹那にあるのである[#「千萬年は一刹那にあるのである」に傍点]。たゞ渠の云つた通り、この刹那に『一つの靈が一つの靈を接吻する』のは事實であつて、この瞬間ほど兩者の自我が利己的奮勵[#「利己的奮勵」に白三角傍点]をする時はない。それもその筈で、僅か一瞬間|經《た》てば、もう、意志はもとの自分を食はなければならないから[#「僅か一瞬間」〜「ならないから」に傍点]、臨時の非我なるものが見えて居る間だけでも、その痛みの感じない他體を食つて、樂みとするのである[#「臨時の非我なるものが」〜「樂みとするのである」に白丸傍点]。然し、光の消えた跡は、以前の闇よりも一段暗く思はれる樣に、なまじツか短い樂みがあつただけ、その跡の悲みは一層増すのだから、
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