し地球の運転が逆になったら反《かえ》って宙を飛ぶのが並のもので下に静《じっ》としているのが怪物《ばけもの》になるかも知れない。また目方《めかた》にしてもその通《とおり》で此処《ここ》で十|匁《もんめ》あるものを赤道直下で量《はか》ったらきっと目方《めかた》が減る、更《さ》らに太陽や惑星の力を受けない世界に行って目方《めかた》を量《はか》るとしたら、目方《めかた》はまるで無くなってしまうかも知れない。してみると目方《めかた》がなければ怪物《ばけもの》だとは一寸《ちょっと》云い難《にく》くなる。
 まあ怪物《ばけもの》に目方《めかた》があってもなくっても、そんな事は構わないとして次に大怪物《だいかいぶつ》である我々人間の事を少し考えたい、人間が五官によっている間はまだ悪い怪物《ばけもの》である、世人は科学に中毒してあまりに人間の五官を買い被《かぶ》り過ぎている。暗いところでは何も見えない、鼠や猫に劣る眼を持って実際正確に事物が見えようか、盗人《ぬすびと》の足痕《あしあと》を犬のように探れない鼻で実際香が嗅げようか、舌にしてもその例に洩《もれ》ない、触感も至って不完全なもので、人間はこの五官
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