におい》がする、この花がまた怪物《ばけもの》である、云うに云われない菊特有の香気《におい》はどうして出来たものか、これも深く詮索をすれば結局判らない事になってしまう。次に鐘を叩くとカアーンと音がする、その音は影も形もなく駈《かけ》るように遠くに響いて行く、人間の拵《こしら》えた説明では到底《とうてい》その理由が満足に判らない、これも確かに怪物《ばけもの》である。
かく種々《いろいろ》怪物《ばけもの》の例を挙げて来たが、こう云う我々人間こそ最も大きな怪物《ばけもの》である。悪い事も考えれば善い事も考える、歩きたいと思えば足が動くし、手を揚げようとすれば手が揚がる、生理学者の説明はさることながら詮《せん》ずるに人間は一向《いっこう》に判らない大怪物《だいかいぶつ》である。この自分が大怪物《だいかいぶつ》である事を悟らずに種々《いろいろ》怪物《ばけもの》の事を想像してやれ宙を飛んだり舞ったりするのが怪物《ばけもの》であるの、怪物《ばけもの》に目方《めかた》はないなぞと勝手に考える、しかしこれは疑えば疑《うたがい》が出て来る、成程《なるほど》地球の引力で物が下に静《じっ》としているのだが、も
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