てやすまず
一生に二どと通らぬみちなのだからつつしんで
自分は行かうと思ふと

  歩行

天上で
まづ太陽がそれをみてゐる
草木がみてゐる
蝶蝶やとんぼ[#「とんぼ」に傍点]がみてゐる
わんわん[#「わんわん」に傍点]がみてゐる
あかんぼがよたよたと歩いてゐるのを
ここは路側《みちばた》である
そのあかんぼからすこしへだたつて
手を拍つてよんでゐるのは母である
かうしてあゆみををしへてゐる
かうしてあかんぼはだんだんと大きくなり
そして強くなり
やがてひとりで人間の苦しい道をもゆくやうになるのだ
おおよたよたと
赤い小さな靴をはき
あんよする
あんよする
お友達がみんなみてゐるのだから
ころんではいけません
此の可愛らしさ
みよ
而も大地を確りとふみしめて

  家族

わたしの家は庭一ぱいの雜草だ
わたしは雜草を愛してゐる
まるで草つぱらにあるやうなわたしの家にも冬が來た
鋼鐵《はがね》のやうな日射の中で
いのちの短いこほろぎ[#「こほろぎ」に傍点]がせはしさうにないてゐた
わたしらはそのこほろぎ[#「こほろぎ」に傍点]と一しよに生きてゐるのだ

日一日と大氣は水のやうに澄んでくる
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