りとした世界の目ざめ
此の永遠の黎明を
自分はつよく感じてゐる
それをどんなにのぞんでゐるか
而も夜はながい
おもへ
朝日にかがやく冬の畑を
大地の中で肥えふとる葱や大根を
それから人類のことを
偉大なもの
偉大なものは砲彈ではない
※[#「木+解」、第3水準1−86−22]の木のやうな腕である
それはまた金貨でもない
鋼鐵《はがね》の齒をもつ胃ぶくろである
その上に
此の意志だ
強者の詩
人間の此上もなきかなしみは
此のくるしみの世界に生みいだされたことだと云ふか
否!
これこそ人間のよろこびではないか
此のうつくしさが解らないのか
何といふうつくしさであらう
此のくるしみの世界は
此のくるしみに生くることは
みよ
ひろびろとした此の秋の田畠を
重い穗首をたれた穀物
いさましいその刈り手
その穀束をはこび行く馬
ゆたかな天日の光をあびつつ
其處にも此處にも
落穗をひらふ貧しい農婦等
からす[#「からす」に傍点]や雀も一しよであるのか
此のむつましさを知れ
此のうつくしさはどうだ
此の大きなうつくしさはどうだ
此のうつくしさを知るものは強い
此のくるしみの世界にのみ
人
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