する
雪は力を堆積する
そして人間を神神と一しよにする
祝福せよ
子ども等はうれしさに獅子のやうだ
ちらちらと落ちてくる雪
雪の殘忍な靈魂《たましひ》
このうつくしさを頬張り貪り
くるへ
雪もをどれ
雪のやうな子ども等

 ※[#ローマ数字8、1−13−28]


  世界の黎明をみる者におくる詩

鷄の聲にめざめた君達だ
からす[#「からす」に傍点]や雀より早くおきいで
そして畑へ飛びだした君達だ
朝露にびつしよりぬれた君達だ
まだ太陽も上らないのに
君達の額ははやくも汗ばんだ
君達はひろびろとした畑の上で
世界の黎明《よあけ》をみた
それをみるのは君達ばかりだ
此の世のはてからのぼつてくるその太陽を
どんなに君達はおどろかしたことか
君達はしるまい
君達はしるまい
此の若き農夫を思へ!

  自分は此の黎明を感じてゐる

自分は感じてゐる
此の氷のやうな闇の底にて目もさえざえと
ふゆの黎明を
遠近《をちこち》でよびかはす鷄の聲聲
人間の新しい日をよびいだすその聲を
ぐらす[#「ぐらす」に傍点]のやうに冴えかへる夜氣
枯れ殘つた草の葉つぱの上に痛痛しい雪のやうな大霜
なにもかもはつき
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