ひとりでに廻りはじめる
ごろごろと
その音はまるで海のやうだ
金《きん》の穀物は亂暴にもその摺臼に投げこまれて
そこでなかのいい若衆《わかいしゆ》と娘つ子のひそひそばなしを聞かせられてゐる
ごろごろと
その音はまるで海のやうだ
ごろごろごろごろ
何といふいい音だらう
あちらでもこちらでもこんな音がするやうになると
お月樣はまんまるくなるんだ
そしてもうひもじがるものもなくなつた
ああ收穫のよろこびを
ごろごろごろごろ
世界のはてからはてまでつたへて
ごろごろごろごろ
草の葉つぱの詩
晩秋の黄金色のひかりを浴びて
野獸の脊の毛のやうに荒荒しく簇生してゐる草の葉つぱ
一まいの草の葉つぱですら
人間などのもたない美しさをもつ
その草の葉つぱの上を
素足ではしつて行つたものがある
素足でその上をはしつて行つたものに
そよ風は何をささやいたか
こんなことにもおどろくほど
ああ人間の惱みは大きい
素足でその上をはしつて行つたものがあると
草の葉つぱが騷いでゐる
或る風景
みろ
大暴風の蹶ちらした世界を
此のさつぱりした慘酷《むごた》らしさを
骸骨のやうになつた木のてつぺんにとまつて
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