そこへ重重しい地響をたてて
大旋風のやうに堂々と突進してきた汽車
みろ
並行し交叉してゐる幾條のれーる[#「れーる」に傍点]のなかへ
その中の一本の線をえらんで
飛びこんできた此の的確さ
そしてぴたりとぷらつとほーむ[#「ぷらつとほーむ」に傍点]で正しくとまつた
此立派さを何といはうか
此の勇敢は壓迫する
けれど道は遠い
※[#「さんずい+氣」、第4水準2−79−6]罐《ヱンジン》をば水と石炭とでたつぷり滿たせ
而して語れ
子どもらの歡呼をうけてきたことを
それから女の首と手足をばらばらにしたことを
木も家もひつくりかへして見せたことを
子どもらの愛するものよ
此の力強さを自分も愛する

  都會の詩

煤烟はうつくしい
その煤烟で一ぱいになつた世界だ
その中にある此の大都會
働く者のかほをみろ
その手足をみろ
何といふ崇高《けだか》いことだ
ああ煤烟
その中でうめく勞働者の群
ふしぎなこともあればあるものだ
これが新鮮で
而も立派にみえるのだ
なにもかも慘酷のすることだ
ああたまらない
ひきつけられる

  都會の詩

けむりの渦卷く
薄暮の都會
ぽつと花のやうに點じ
蔓のやうな
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