枝をひき裂き
葉つぱをふきちらし
頑丈な樹幹《みき》をへし曲げるやうな大風の時ですら
まつ暗な地べたの下で
ぐつと踏張《ふんば》つてゐる根があると思へば何でもないのだ
それでいいのだ
そこに此の壯麗がある
樹木をみろ
大木《たいぼく》をみろ
このどつしりとしたところはどうだ
わすれられてゐるものについて
君達はひつ提げてゐる
各自《てんで》に槓杆《てこ》よりも立派な腕を
石つころをも碎く拳を
これはまたどうしたものだ
それで人間をとり返へさうとはしないのか
全くそれを忘れてゐる
そして馬鹿だと罵られてゐる
鐵のやうな腕と拳と
金錢《かね》で賣買のできない武器とは此のことだ
それは他人には何の役にも立たない各自のもので
君達に最初さういふ唯一の尊い武器をくだすつたのは神樣だが
それをまるで薪木《たきぎ》にもならないものだと嘲つて棄てさせようとした惡漢《わるもの》は誰だ
だが考へてみれば
馬鹿だと言はれる君達よりも
君達を馬鹿だといふ奴等の方がよつぽど馬鹿なんだ
いまに君達がひつ提げながらも忘れてゐるその腕と拳とをおもひだす時
其時、一人が千人萬人になるんだ
其時、彼奴等《きやつら
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