それを考へれば
ああこれは人間以上の人間|業《わざ》だとすぐ解ることだ!
人間は自然を征服した!
今こそ人間は一切の上に立つべきだ
太陽も眩暈《めくる》めくか
ああ人間は自然を征服したか
ああ
けれど人間は悲しい
此の大起重機にその怪力を認めた瞬間から
まつたく憐れな奴隷となつた
そして蟻のやうに小さくなつた
それがどうした
それがどうした
かんかん日の照る地球の一てんに跪坐《ひざまづ》いて此の大怪物を禮拜しろ
ああ此の憂鬱な大起重機の壯麗!
ああ此の憂鬱な大起重機の無言!
耳をもつ者に聞かせる詩
これが神の意志だ
この力の觸れるところ
すべては碎け
すべて微塵となる
高高とどんな物でもさしあげ、ふりあげる此の腕
そこに此の世界を破壞する憂鬱な力がこもつてゐるのだ
娘つ子はこんな腕でだき緊められろ
人形のやうな目のぱつちりしたあかんぼ[#「あかんぼ」に傍点]に
むくむくと膨くれた乳房が吸はせてみたくはないか
それも神の意志だ
これも神の意志だ
言へ
自分達こそ男と女の神樣なんだと
人間に與へる詩
そこに太い根がある
これをわすれてゐるからいけないのだ
腕《うで》のやうな
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