からはじまつて
これから……
※[#ローマ数字3、1−13−23]
其處に何がある
足もとの地面を見つめてかんがへてばかりゐる人間の腰ははやく彎曲《まが》る
いたづらに嘆き悲しんではならない
兄弟よ
あたまの上には何があるか
樹木のやうに眞直《まつすぐ》立て
そして垂れた頭をふりあげて高く見上げろ
其處に何がある
この大きな青空はどうだ
人間はこの青空をわすれてゐるのだ
兄弟よ
この大きな青空はどうだ
憂鬱な大起重機の詩
ぐつと空中に突きだした
腕《うで》だと思へ
いま大起重機は動いた
重い大きなまつ黒いものをひつ掴んで
それを輕輕と地面から空中へひき上げた
微風すらない
此の靜謐をなんと言はうか
怖しいやうな日和だ
蟻のやうに小さく
大きな重いものの取去られたところに群がつて
うようよ蠢動《うごめ》いてゐる人人
大起重機のたしかな力をみろ
その大浪のやうな運動を
その大きな沈默を
ああ大起重機の憂鬱!
ああ大起重機の怪物!
此の不可思議な怪力に信頼しろ
それの動いて行く方向をみつめて大空を仰いでゐる人人
それを据附けたのは何ものだ
それをこしらへたのはどの手だ
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