》は地べたにへたばるんだ
まあいいさ
何もかも神樣がごぞんじでいらつしやることだ
さうして其時、世界が息を吹返すんだ

  寢てゐる人間について

みろ
何といふ立派な骨格だ
そしてこの肉づきは
かうしてすつぱだかで
ごろりとねてゐるところはまるで山だ
すやすやと呼吸するので
からだは山のうねりを打つ
ようくお寢《やす》み
ようくおやすみ
ゆふべの泥醉《ゑひ》がすつかりさめて
ぱつちりと鯨のやうな目があいたら
かんかん日の照るこの大地を
しつかり
しつかり
ふみしめて
またはたらくのだ
ようくおやすみ
おお寢てゐる人間のもつてゐる此の偉大
おおびくともしない此の偉大
それをみてゐると
自《おのづか》らあたまが垂れる

  子どもは泣く

子どもはさかんに泣く
よくなくものだ
これが自然の言葉であるのか
何でもかでも泣くのである
泣け泣け
たんとなけ
もつとなけ
なけなくなるまで泣け
そして泣くだけないてしまふと
からりと晴れた蒼天のやうに
もうにこにこしてゐる子ども
何といふ可愛らしさだ
それがいい
かうしてだんだん大きくなれ
かうしてだんだん大きくなつて
そしてこんどはあべこべに

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