日あたりにころがつてゐる
赤い林檎
林檎をしみじみみてゐると
だんだん自分も林檎になる
おなじく
ほら、ころがつた
赤い林檎がころがつた
な!
嘘嘘嘘
その嘘がいいぢやないか
おなじく
おや、おや
ほんとにころげでた
地震だ
地震だ
赤い林檎が逃げだした
りんごだつて
地震はきらひなんだよう、きつと
おなじく
林檎はどこにおかれても
うれしさうにまつ赤で
ころころと
ころがされても
怒りもせず
うれしさに
いよいよ
まつ赤に光りだす
それがさびしい
おなじく
娘達よ
さあ、にらめつこをしてごらん
このまつ赤な林檎と
おなじく
くちつけ
くちつけ
林檎をおそれろ
林檎にほれろ
おなじく
こどもよ
こどもよ
赤い林檎をたべたら
お美味《いし》かつたと
いつてやりな
おなじく
どうしたらこれが憎めるか
このまつ赤な林檎が……
おなじく
林檎はびくともしやしない
そのままくさつてしまへばとて
おなじく
ふみつぶされたら
ふみつぶされたところで
光つてゐる林檎さ
おなじく
こどもはいふ
赤い林檎のゆめをみたと
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