いいゆめをみたもんだな
ほんとにいい
いつまでも
わすれないがいいよ
大人《おとな》になつてしまへば
もう二どと
そんないい夢は見られないんだ
おなじく
りんごあげよう
轉がせ
子どもよ
おまへころころ
林檎もころころ
おなじく
さびしい林檎と
遊んでおやり
おう、おう、よい子
おなじく
林檎といつしよに
ねんねしたからだよ
それで
わたしの頬つぺも
すこし赤くなつたの
きつと、さうだよ
店頭にて
おう、おう、おう
ならんだ
ならんだ
日に燒けた
聖フランシス樣のお顏が
ずらりとならんだ
綺麗に列んだ
おなじく
錢で賣買されるには
あんまりにうつくしすぎる
店のおかみさん
こんなまつ赤な林檎だ
見も知らない人なんかに
賣つてやりたくなくはありませんか
おなじく
いいお天氣ですなあ
とまた
しばらくでしたなあ
おや、どこだらう
たしかにいまのは
榲※[#「木+孛」、第3水準1−85−67]《まるめろ》の聲だつたが……
底本:「日本現代文學全集54 千家元麿・山村暮鳥・佐藤惣之助・福士幸次郎・堀口大學集」講談社
1966(昭和
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