たり
暗くなつたりしてゐる
ほんとに冬の雀らである
ある時
まづしさを
よろこべ
よろこべ
冬のひなたの寒菊よ
ひとりぼつちの暮鳥よ、蠅よ
ある時
その聲でしみじみ
螽斯《こほろぎ》、螽斯《こほろぎ》
わたしは讀んでもらひたいんだ
おまえ達もねむれないのか
わたしは
わたしは
あの好きな※[#「田+比」、第3水準1−86−44]尼母經《びにもきやう》がよ
ある時
まよなか
尿《せうべん》に立つておもつたこと
まあ、いつみても
星の綺麗な
子どもらに
一掴みほしいの
ふるさと
淙々として
天《あま》の川がながれてゐる
すつかり秋だ
とほく
とほく
豆粒のやうなふるさとだのう
いつとしもなく
いつとしもなく
めつきりと
うれしいこともなくなり
かなしいこともなくなつた
それにしても野菊よ
眞實に生きようとすることは
かうも寂しいものだらう
ある時
沼の眞菰の
冬枯れである
むぐつちよ[#「むぐつちよ」に傍点]に
ものをたづねよう
ほい
どこいつたな
りんご
兩手をどんなに
大きく大きく
ひろげても
かかへきれないこの氣持
林檎が一つ
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