かつお》を、そんな一時に食ったので、途事《とちゅう》咽《のど》が渇《かわ》いて仕方がない、やたらに水を飲んだもので、とうとう翌日に下痢《げり》で苦しんだよ、それ故まあ、一時はおどかしてやったものの矢張《やはり》私の方が結句《けっく》負けたのかも知れないね。
 これと同じ様な事が、京都《きょうと》に居《お》った時分にもあった、四年ばかり前だったが、冬の事で、ちらちら小雪が降っていた真暗《まっくら》な晩だ、夜、祇園《ぎおん》の中村楼《なかむらろう》で宴会があって、もう茶屋を出たのが十二時|過《すぎ》だった、中村楼の雨傘を借りて、それを片手にさしながら、片手には例の折詰を提《さ》げて、少し、ほろ酔い加減に、快《よ》い気持で、ぶらぶらと、智恩院《ちおんいん》の山内《さんない》を通って、あれから、粟田《あわだ》にかかろうとする、丁度《ちょうど》十楽院《じゅうらくいん》の御陵《ごりょう》の近処《きんじょ》まで来ると、如何《どう》したのか、右手《ゆんで》にさしておる傘《からかさ》が重くなって仕方がない、ぐうと、下の方へ引き付けられる様で、中々《なかなか》堪《こ》らえられないのだ、おかしいと思って、左
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