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「悪徒の友なる懐《いと》しき夜《よ》は狼の歩み静《しづか》かに共犯人《かたうど》の如く進み来りぬ。いと広き寝屋《ねや》の如くに、空|徐《おもむろ》に閉《とざ》さるれば心|焦立《いらだ》つ人は忽《たちまち》野獣の如くにぞなる……」と。余は昨夜も例の如く街に灯《ひ》の見ゆるや否や、直《たゞち》に家を出で、人多く集《あつま》り音楽|湧出《わきいづ》るあたりに晩餐を食して後《のち》、とある劇場に入り候。劇を見る為めには非ず、金色《こんじき》に彩《いろど》りたる高き円天井《まるてんじやう》、広き舞台、四方の桟敷《さじき》に輝き渡る燈火の光に酔《ゑ》はんが為めなれば、余は舞姫多く出でゝ喧《かしま》しく流行歌《はやりうた》など歌ふ趣味低きミユーヂカル、コメデーを選び申候。
こゝに半夜を費《つひや》し軈《やが》て閉場のワルツに送られて群集と共に外に出《いづ》るや、冷《つめた》き風|颯然《さつぜん》として面を撲《う》つ……余は常に劇場を出でたる此の瞬間の情味を忘れ得ず候。見廻す街の光景は初夜の頃入場したる
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